食堂の白井さんとこじらせ御曹司

 黒崎さんは、読み返してもなお、何も気が付かないようです。
 私も、こんな返答が来たらバカにされたって思いますけど……。
 それで、思わず「ひどい!」と思ってここに足を運んでしまったわけですけど……。
 バカにしているつもりはなかったんですね。……というか、指摘されても、分からないのですか。
「そもそも、洗濯が乾かないというのを学生相談室に持ち込むのはどうなんだ?本気で相談する気もない、私の顔が見たいだけの冷やかしだろう?」
 ああ、そうですか。冷やかしだろうと思っているので、目が曇っているのですね。
「そうは思いませんけれど」
 本当に黒崎さんは何が問題か分からないのか首を傾げています。
「君がそう思った理由が分からない。だが、私は、いくら冷やかしだと思っても冷やかしじゃない場合も考えて誠意をもって返答をしたつもりだ。決してバカにしてはいない」
「どこが誠意なんですか?大学側は何もしない、自己責任だと突き放しているだけじゃないですか」
 何とかしてくださいの回答が、洗濯機のカタログを渡すことだなんて。
「わざわざ洗濯機のカタログを入手してアドバイスしているんだぞ?それのどこが突き放しているというのだ!」
 カタログをテーブルの上に並べて、とんとんとんとイラついた調子で黒崎さんが叩いた。
「ほら、最新のカタログだ。電気屋で話を聞いておすすめなものをいくつも用意した。電気代や乾燥にかかる時間など、選ぶ時のポイントになるところにチェックまで入れてだぞ?」
 自信満々で語る黒崎さん。
 バカにしているのではないのですね……。この人が想像力の働かない、馬鹿なのですね……。
「はぁーーーっ」
「それから、最近では靴まで洗って乾燥させられるやつもあるし、聞いてるのか?」
 いや、少なくとも大学の学生相談係に抜擢されるくらいですから、馬鹿ではなくて常識知らずなだけか。
「行きましょう」
「は?洗濯機を見に行きたいのか?」
「百均に行きましょう」
 大学から徒歩10分の場所に中規模のスーパーがあります。その中に百均も入っているのです。
「意味が分からない」
 ソファに座ったままの黒崎さん。
「なぜ、学生がバカにしてると思ったのか、まだ分かりませんか?知りたいなら、ついてきてください」
 黒崎さんは、この問題をばかばかしいと放置する気はないようで、しぶしぶながら立ち上がりました。