食堂の白井さんとこじらせ御曹司

「いくら私に非はないとはいえ、表に出れば私のせいだと責められるようなことが次々に起きた」
 想像してぞっとしました。
 黒崎さんは、イケメンの中でも、かなり上等なイケメンです。かっこいいだけではなく、目を引くんです。カリスマ性があるというか……。
 フェロモンでも出しているんでしょうか?艶っぽいと言いますか、顔の作りがよいことにプラスして説明しようのないあらがえないような魅力があふれています。
 ああ、古典でいうところの「匂い立つ」とはこういうことなのかもしれません。
 もともと「におい」は「霊(に)が這う」が語源らしいです。
 魂に訴えかけるような霊的な何かで人を引き付けてしまうとしたら……。
 苦労、するかもしれませんね……。最近は肉食女子と呼ばれる人種も増えてきているようですし……。
「そんな人間がうろうろしているせいで、本当に相談したい人間が近寄れない場所になってしまったんだよ。だから、仕方なく、居留守を使うようになった。相談事を紙に書いて入れてもらうことにした」
「はぁ……」
 大変さを想像して、噴火しそうな怒りが落ち着きました。
「自分に似合う口紅の色が分からなくて困っています。選んでくださいといった相談事には、文書で返答することにしたんだ。教授とうまく意思疎通ができないといったような、会って話を聞いたほうがいいような相談内容であれば、会って話を聞くようにしている」
 なるほど。
「ほとんどの相談事は文書で問題ない。会って話を聞く必要がありそうな相談は相談室ではなく、事務所の奥に仕切られた場所で面談して話を聞くようにしている」
 ああ、二人きりにならないようにしているということですね。
 なかなか対処としては頑張っていると言えないことはないのかもしれませんが……。
「事情は分かりましたが、これは、いったいどういくことでしょう?文書での返答で問題がないと言っていましたけど……」
 ご意見の書かれた用紙を黒崎さんに向ける。
「あなたにバカにされたと食堂のご意見箱に入っていました」
「は?」
 黒崎さんが私の手からカタログ付きのご意見用紙を受け取った。
「何もバカにしていないだろう?」
 ご意見に目を通し、添付されている相談用紙と黒崎さんが書いたであろう返答を読み返して黒崎さんが口を開いた。
 どこが?