食堂の白井さんとこじらせ御曹司

「本気になれば改善できるだけの権力……あー、権限はあるんだけど、どうにもなんていうかねぇ……。期待されてないというか、相談事に偏りがあるというか……」
 期待されてない?
 それは実績が伴ってないってことかな?
 相談事に偏りがあるっていうのはどういうことなんでしょう?
「悩み相談も時には学生相談室に持ち込まれることもあるみたいだけど、そちらは保健室に常駐しているカウンセラーに回すから、結局、まぁえーっと」
 ああ、カウンセラーは保健室勤務なんですね。そうでしたか。
「結梨絵ちゃん、何か相談したいことがあったら、話を聞くよ?力になれるかもしれないから」
 前にも菜々さんはそういっていました。
「うん、ありがとう。特に悩みはないですよ。あ、そうだ、職員のこともよくわかってないんですけど、すごく顔の良い男の人がいるでしょう?」
 菜々さんが電話の先でうっと小さな声を出した。
「もしかして、前髪あげて、眼鏡かけて、背の高い……人のこと?」
 あ、やっぱり有名なんですね。
「……学生相談室の近くで会った……とか?」
「そうそう、そうなんです!合コンのときに前に座っていた人と声が似ていたので、思わず顔を見てしまいました。そうしたら、にらまれてしまって……」
「え?睨んだ?声が似てる?……結梨絵ちゃん、顔は似てるとか、思わなかったの?」
「あー、合コンのときは眼鏡はずしていましたから、顔がよく見えてなかっんです。だから似てるかどうかわからなくて。かろうじて、髪型や眼鏡をかけていたかどうかなど、相違点がわかる程度です。えっと、でも、それで、ついじーっと見てしまって、不快な思いをさせてしまったようで……」
 だからと言って、ちょっとイケメンの態度もね。あれだったんですけれどね。
「そ、そう。はは……いや、まさか、そんなことに……。これは、うん、結梨絵ちゃんもあいつも……ああ、そうなの……」
「あいつ?」
「ううん、何でもない。えっと、顔は似てないような少しは似てるような……あ、ごめん電車が来るからまたね」
 あははと乾いた笑いを漏らして、菜々さんは電話を切った。
 えーっと。
 何の電話をしたんでしたっけ?
 そうそう、学生相談室に寄せられる相談事には偏りがあるとはどういうことでしょう?