食堂の白井さんとこじらせ御曹司

 イケメンさんもこのあたりのこの時間によく来るならこれからもきっと偶然は続くはずです。というより、偶然ではなくて必然というものでは?。
「何を聞いたのかは知らないが、私は特定の学生と特別仲良くするつもりはない」
 はい?
 スーツを着ている20代後半に見えるイケメン。
 大学職員か、講師でしょうか。
 まぁ、学生に手を出さないっていう宣言は立派です。というか、当たり前のことなのです。
 でも、ちょっとイケメンだからって……。いきなりすぎやしませんか?
 自分に言い寄るために私がこのあたりをうろうろしていると誤解していますよね?
「昨日、顔をじろじろ見たことは謝ります。知り合いに似ていたので……」
 似てるのは声だけですだけどね!
「昨日も今日も、どこの誰かも分からない人にわざわざ偶然を装ってこんなところで待ち伏せするような趣味はありません」
 イケメンは眼鏡の奥の目を少しだけ細めた。
「どこの誰かも分からない?なるほど。それは失礼した。すでに学内中に噂が流れていると思っていた。で、教室もない3号棟の階に何の用だ?」
 噂?
 なんだろう。
 顔はいいけど性格の悪い職員がいるって噂でしょうか?
 はー、もうなんか疲れました。
 言葉を添えず、学生相談室のドアを指します。
「ふんっ。結局そういうことだろう。相談事があれば紙に書いて箱に入れておくことだな。すべての相談に乗れるほど暇じゃないからな。相談内容を見て直接話す必要がないものは紙に返答を書いて返されるだけだ」
 ああ、そういうことか。
 学生相談室は、いつも留守なのではなく、留守にしてあるということですか。
 相談内容を見て会って話すか、文書で返答するか決める……か。
 紙に書いたほうが言いやすいこともあります。口には出しにくい相談もありますし。
 ……だけど、逆に紙に書きにくい相談。直接じゃないと伝わらない相談もあるんじゃないでしょうか。
 そもそも、この人が言うように、3号棟の2階には相談室のほかには会議室だとか大学の歴史を展示した資料室とか学生が用がなければ近づくようなところではありません。
 わざわざ相談しに行こうというからには、それなりに思い詰めていたりするんじゃないかなぁ?いいのでしょうか、それなのに、まずは紙で出せみたいなシステムで。