食堂の白井さんとこじらせ御曹司

「私の言い方が悪かったです。謝ります。苦手って嫌いということではないんです。えっと、黒崎さんのように容姿の良い顔を見慣れていないので、ちょっと緊張するのです」
「嫌いでは、ない?」
 黒崎さんの表情は見えませんが、ほっとしているような声が聞こえました。
「えーっと、ですから、見慣れれば苦手意識も減ると思うので、顔を隠すのはむしろ逆効果……」
 というか、その姿で歩いていると、大学の評判が落ちるのでは……と、心配です。怪しい人がうろうろしていると。
 あ、学生相談室にこもってうろうろはしないのでしょうか?
 でも、コインランドリー設置のための打ち合わせや、就活メイク講座スタートに向けてとかいろいろ人とも会うんですよね?
 サングラスとマスクとニット帽を取り、いつもの眼鏡姿の黒崎さんに戻りました。
「早く、慣れてくれるといいな……。会う回数が増えれば、慣れてくれる?」
「会う回数が増える?」
 それって、学生相談室への呼び出しが増えるということでしょうか……。
 目いっぱい遠慮したいです。
「回数の問題ではなくて、えーっと……あの、何か私に用事でしたか?仕事に遅れてしまうので」
「ご、ごめん。これが渡したくて」
 先ほど曲がり角から差し出されたビニール袋を私の前に持ち上げて見せてきます。
「え?」
「お礼……としては、その、大したものじゃないけれど、あー……っと、白井さん、知らないみたいだったから」
 知らないみたい?
 お礼って、別に黒崎さんからお礼をもらう必要なんてないんですけど。
 化粧を教えたのは学生だし。ちゃんと残業代出るみたいですし。
「と、とにかく、受け取って!じゃぁ、また!」
 手に持たされました。
 えーっと、押し売りでなく、押しプレゼント?
 いや、プレゼントというには、その辺のスーパーで買い物したようなビニール袋に入った品はふさわしくありませんね。
 袋の中身を取り出します。
「つけて味噌?献立いろいろ味噌?」
 ケチャップやマヨネーズのようなチューブが一つと、ゼリータイプドリンクが入っているような形のパウチが一つ入っていました。
 ……。なんで、味噌?
 ……あ!
「も、もしかして!これが、ご意見で置いてほしいって言っていた味噌のこと?」
 いろいろな料理にかけるだけ……。
 そ、そうなんだ。