シルフィスはリシュナに背を向け、地面に胡坐をかく。吐き捨てた。
「何度も考えたよ……あのとき、僕がもう少し思慮深ければ、って」
「あら、ごめんなさい。そんな皮肉な意味じゃなかったのよ。誉めたつもり」
 急いで言ったリシュナの言葉を聞き流し、シルフィスは、ふん、と続ける。
「それと、さっさと城を出ていれば、ってね」
 沈黙があった。
 またつまらないことを言ってしまったな、とシルフィスは心の中で苦笑いした。
 なぜ本心が出てしまうのだろう。リシュナには、ナーザの家で言い争ったときに、自分の嫌な面を晒してしまったからかな。それとも、リシュナが気持ちをはっきり出すから、つられたのかな。
 ……戻ろう、と腰を上げかけたが。
「ねえ、ナーザにもそういうところがあるんだけど……もしかして、あんたって、自分の存在を罪だと思っているの?」
 リシュナの声に動作が止まった。
「……謀反人の子だからね」
 後ろを向かずに、軽く答える。
「あんたの母親が謀反人でも、あんたは謀反人じゃないでしょう?」
「王と同じことを言う」
 シルフィスは笑った。
「でも、母は僕のために───僕を王位につけるために呪法を使って、死んだ。僕は母が死んだことを恨んで、王に仇を為すかもしれない」
 家臣たちは口々にそう言った。
「あんた、王様を恨んでいるの?」
「恨んでなんか……!」
 体ごと、激しく、シルフィスはリシュナに向き直った。