祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書

 シルフィスはその前に立ち、彼を見下ろした。
「つまり、雷帝は、復活できる?」
「……できる、その髪の毛があれば。できた、ホルドトなら」
 では、『黒白の書』を手に入れたネイロフにも、できるのか。雷帝の遺髪があれば。
 ……見つけた、ということか? この四年間、何も起こらなかったのは、何かで遺髪の存在を知り、探していたから。そして、見つけた、今──。
 伝説の暴君が甦る。術者の──ネイロフの操り人形となって。
「雷帝の力は……実際、どのくらいあるんだ」
 もし、復活したとして。
 ナーザは答えない。答えたのはリシュナ。
「百や二百の兵は、ひとりで蹴散らしたわよ。言うこと聞かない小さな村なんか、簡単にツブしてたわ」
 赤い、復讐、の文字が目に浮かんだ。馬鹿な。この国自体を呪うつもりか。王位継承争いの恨みに、関係ない民草まで巻き込むのか。