何度目かに辺りを見回したとき、やっとこちらに歩いてくる子どもを見つけた。
「おおい、君」
 シルフィスはすぐさまその子どもを呼び止めた。
 とにかく『雷帝』本人に会ってみてからだ。
「君、『銀の子猫』を知っている? 『雷帝』のいる」
 子どもに駆け寄り、目の高さを合わせて尋ねると、子どもは首をかしげた。
「電気クラゲのいる『銀の子猫』なら、知ってる」
「ああ、そこでいい。案内してくれるかな?」
 町で唯一のギルドだという話だったし、名前が同じなら間違いないだろう。
 子どもは、こくん、と頷いて歩き出した。
 シルフィスは子どもの足に合わせて、ゆっくりあとをついて行く。
 短い階段を降りて右に曲がり、建物と建物の隙間を抜けて、半分ガラクタに占領された狭い坂道を左に曲がり……元いた場所に戻る自信がなくなってきたとき、ようやく子どもが足を止めた。
「ここ」
 上に向けた指先を視線で辿ると、色っぽい銀色の猫を浮かせた黒い看板。
 シルフィスが駄賃をやると、子どもは嬉しそうに駆け去った。