シルフィスはページをめくり、戻し、再びめくった。
 どこかに、ないか。魔法を取り消す魔法。
「……読めるの?」
 肩の上あたりから、リシュナが問いかける。
 シルフィスは、ああ、とだけ答えた。魔法は特殊な文字で伝えられる。魔法使いになりたかったから、一生懸命文字を学んだ。結局無駄だったと、自嘲と諦めだけ残ったのだったけれど。
 無駄じゃなかった、かもしれない。
 シルフィスの手が止まる。
 見つけた。操天魔法。ページの最後に、嘲笑うようなふざけた手跡で書かれている。止めたくなったときは──と。
 シルフィスは『黒白の書』を持って立ち上がり、床を見ながら部屋を歩いた。
 床には様々な記号や陣が描かれている。歩いては立ち止まり、『黒白の書』の開いたページの図と床を見比べる。
 リシュナがふわふわと宙を漂い、シルフィスの肩の辺りから魔法書を覗き込んだ。
「何か見つけたの? 何を探しているの?」
「空を縛る魔法を解く方法」
 『黒白の書』のページを押さえて、シルフィスは答える。
「そのページに描かれた魔法陣が必要なのね?」
 そう確認して、リシュナはシルフィスから離れた。
 手分けして探してくれるのか。
 助かる。