「うぅ~…。日野くん聴きに来てくてれるかなぁ…」
メモリアルホールのバックでトランペットを抱えながら、優花はため息混じりに言った。
「優花ってば、またその話?」
遙が半笑いで言う。
「来るって言ってたなら絶対来るって!なぁーに心配しちゃってんの!」
「そ、そうだよね…。ああー、そしたら余計緊張してきた!ソロ絶対失敗するよぉ…」
「コラコラコラコラ!本番直前に自信なくしちゃヤバいでしょうが!成功する自分の姿を想像しなさい!」
「成功する…自分の姿…」
そうこうしてる内にホールの演奏は終わり、大きな拍手が聞こえる。
「あああ遙ぁ、うちらの番きちゃったよおぉぉ~!」
「うぅ~ホントだね…。超緊張するけど、がんばろ!」
「うん!」
どきどきしながらホールに入るドアを開ける。
―――す、す、すごい人…!!
一瞬目眩を起こしながらも、優花はぐっと踏み込んで、自分の席を目指す。
―――考えちゃだめだめ。指揮を見て、歌うように…
チューニングを合わせ、指揮棒を持った遙をじっと見つめる。一瞬遙と目が合い、遙がちょっと微笑んだ。そしてまっすぐ前を見て、指揮棒を挙げた―――