西九条が不機嫌だ
目の前に座って夕食を食べる
西九条は明らかに怒っていた

怒りのオーラが全身を覆っている

「皮靴、ありがとうございました」

とりあえず
礼を言ってみた

西九条は「うん」とだけ
頷く

重たい空気に私の心が
苦しくなった

別にいいけど

…って以前の自分なら
思っていたかもしれない

もう少しで
西九条に追い出してもらえるなんて
喜んでいたかもしれない

でも今は
違う

西九条の不機嫌が怖い

私の居場所がなくて
どうしていいか
わからなくなる

「あの…怒ってる…よね？」

「俺の説明
理解している？」

「えっと…
青山先生とは何の関係もないって
いうこと？」

「そうだ
理菜がやろうとしている行動が
気に入らない」

『理菜』か
本日２度目だ

名前で呼ばれた

いつも
『お前』って言われるのに

なんか変な気分だ

「気に入らないって言われても」

「それに『解放』って何だ？」

「それは…
青山先生と西九条がくっつけば…
離婚になるから…」

「離婚はありえない」

「なんで？」

「なんでも」

意味がわからない
なんで離婚がありえないのだろう