私は腕時計で時間を確認した
午後7時をさしていた

ついでに携帯の時間も見る
液晶には不在着信が3件あった

見ると
西九条からだった

6時から3回
10分おきにあった

家に帰ってきてないと
知られたのだろう

だって帰りたくないし
あそこは
私の家じゃない

私の家は…
どこだろう

帰るべき
家は


どこにあるんだろう

「昨日に引き続いて
夜遊びの好きな女だな!」

後ろから腕を掴まれた

振り返ると
スーツを着ている西九条が
私の二の腕を強く掴んでいた

怒っているのか

西九条の顔が怖かった

「何?」

「『何?』じゃねえだろ!
夕飯の時間は7時って決まってるんだよ」

「は?」

「7時に飯を食うんだ!
耳が遠くて、理解の遅い頭だな」

「もう7時だけど」

「さっさと家に帰って
飯を食うぞ」

「家ってどこ?」

「だから
頭の悪いやつだな」

私は西九条の腕を振り払った

「あそこは私の家じゃない!
西九条の家かもしれないけど

私の家は……」

あそこじゃない

私は口を閉じた
西九条から視線をそらして

町行く人々を眺めた