「あんたには関係ないだろ!
俺は理菜がいいと言った
あんたとの約束に、子どもを産ませろとは
なかったはずだ

あんたとの約束は
来年から俺が会社を引き継ぐ
それだけだ」

西九条は
父親の腕を掴むと
引き摺るようにして
家から追い出した

私は見送りに行く気は
なかった

見送りたいとも思わなかった

玄関が閉まる音が聞こえると
肩の力が抜けた

「本当に悪かったな」

私の部屋に
顔を出した西九条が
ぎこちない笑顔で言ってきた

「いいよ
西九条が悪いわけじゃないし」

「ケーキでも食べるか?」

「え?
あるの?」

「ああ
鈴子さんの手作りケーキだ」

「わーい
食べる、食べるよ~」

私はスキップしながら
部屋から出てきた

西九条が安心したように
ほほ笑んだ

気にしてたんだ

私が傷ついたんじゃないかって
気にしなくていいのに

別に直接的に
私が攻撃されたわけじゃないし…

傷ついたのはむしろ
西九条のほうだ

母親のことを悪く言われたんだ

私はダイニングのテーブルを
叩くと
ケーキの催促をした

そうすることが
西九条にとって
いいと思ったから