いつか普通の恋がしたい。
そんな願いすらも叶わずに
ちっぽけな道端で今日を彷徨う。
いつか終わりは見えるのだろうか。 
この呪いからいつ解放されるだろうか…。

〜第一章〜 山本栞のかくしごと

桜が綺麗に見える4月の初め。
朝から吹く風は少し肌寒かった。
高校に向かう道は両側に桜が見える桜坂だった。
私は学校に行っても友達なんかいない。
わざと中学校からみんなが行くような高校を選ばなかったのだ。
その為誰も友達がいない…昨日までは。
「ゆーあっ」
後ろから少し馴染みのあるような声が聞こえた。
振り向くと昨日できた友達である山本栞ちゃんがいた。
「あ…栞ちゃんおはよう…。」
まだ挨拶をするのも少し難しいのかもしれない。
この理由を聞けば私が怯むのが分かると思う。
栞ちゃんは可愛いと綺麗がいい感じに溶け合っていて背は中間ぐらいででも私よりもちょっとだけ高い。目はパッチリだし鼻はちっちゃくてとりあえず誰が見ても美人と言える程の素晴らしい人間だ。
「おはよう!」
ああ…神々しい。女神が私の隣にいていいのかと毎回思うほどだ。
「綺麗だね桜。ここら辺はあんまり咲かないって有名なんだけどなぁ。あ、ゆあの可愛さに見惚れちゃったのか!納得。」
「ふへぇ??そ、そんなわけないよ!し、栞ちゃんの方が可愛いし絶対に栞ちゃんに見惚れちゃったんだよ!私とおんなじで…。」
「え、私とおんなじって見惚れてたの?wゆあに言われると嬉しいなー。」
ふわっと笑うその顔はやっぱり天使のような微笑みだった。
「あ!ねぇねぇ、もうクラス発表の紙張り出されてるんじゃない??」
今日は入学式だ。クラス発表…栞ちゃん以外友達いないから栞ちゃんと一緒がいいけど…
「あ!うん!いこ。」
「それじゃ走ろーよー!いける?」
「え?あ大丈夫!」
「いっくよー!GO‼︎」
なんだろう足はもうもつれるし息も上がるけどすっごく楽しい。こんな日々が続けばいいのにな…。
「つ、ついたぁぁぁ。」
「や、やっと着いたね、栞ちゃん。」
「う、うん。」
私だけじゃない栞ちゃんも疲れてる…。
「えーっとアレ?なくない?」
「そ、そんなはずは!私1.2組探してるよ!」
「あ、私も1.2組探してたww」
「ちょっとぉ!」
ちょっと抜けているところっていうか…そういうところも好きなポイントである。
「て、ことは…」
指差しているのは断崖の鉄壁3.4組だ。どっちかなんだよね…。これで栞ちゃんと違ったら…
「えーっと…3…組にはないよ?」
「え?じゃ、じゃあもしかしての?」
「あ」
「あ」
「あったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
2人でハイタッチハグしながら心から喜んだ。

_数時間後

「ゆーあ!お弁当食べよー!」
「あ、うん。」
中学校と打って変わったのが給食がないことだ。
中学校では決まった量、決まった献立がありそれを食べていたが高校は違う。
お弁当を持参する生徒、学校の売店でパンを買ったりする生徒など様々いる。
「わー!夢亜のお弁当美味しそ−!」
「え。ほんと?私自分で作ったから美味しいかわからないんだよね…。」
「えー!絶対美味しい!てか私も自分で作ってるんだよねー。」
「え、そうなの?」
栞ちゃんも自分で作っているなんて私との共通点ができて少し嬉しかった。
「んーん!!美味しいいい!自分で作ったからなんだけどちょっと自分を褒めてきます。」
「栞ちゃんの作るのは絶対美味しいよー!!」
「私も意外に結構美味しい。」
「えー!ちょっと食べたい〜w」
お弁当を食べているだけなのにこんなに幸せになれるのは初めてだ。前まではぼっちで食べていたからな…。
コンコン
ドアから小さなノック音が聞こえた。
「なー、栞いる?」
その言葉を聞いた瞬間周りにいた女子たちはざわついた。それも当たり前だ。背は高く髪は茶色で、やっぱり目が行くのは顔だ。美貌すぎる。栞ちゃんとどのような関係だろうか。
「塔矢ー!どされたの、まさか!うちのクラスの女子あさりに来たな!」
「はぁ?違うし!ほらこれお前のだろ?」
手に何か渡された気がする。なんだろうと手を開けてみると中から小さなブレスレットが出てきた。
「コレ、ずっと探してたやつじゃん。うっそ、見つかったの…?」
「いや、昨日掃除してたらカーペットから出てきたんだよ。」
「へぇ〜んで返さずに盗み出そうと…立派な犯罪ですな」
「してないだろ!!!お前に返したんだし。てか踏みそうになって踏んでたら怪我してただろ!」
「え、踏んでないよね?」
「あと一歩だった。」
「ちょ、踏む前提でやめて!w」
楽しげな会話が聞こえる。栞ちゃんも凄く嬉しそうに笑ってなんだかこっちも嬉しくなった気がする。
「じゃ、返したんで帰りますよー。」
「はぁーい。じゃね。」
塔矢という男の子はクラスが違うらしい。しおりとの会話が終わるとすぐに帰っていった。
「すっごい楽しそう…ブレスレット見つかってよかったね!!」
「え、あ、うん…。」
「どうしたの?」
私は何かに気がついた。栞ちゃんの顔が少しだけだけど赤くなっていること。私は少し察したかもしれない。
(栞ちゃんは塔矢くん?が好きなのかもしれない)
「はぁぁぁぁ!まじで恥ずかしかった…!」
「ねぇ、お二人はどういう関係なのか聞いてもいいかな…?」
「あ、私たち?実は従姉妹なんだ。」
「ええっ!!」
「あのね…間違っていたら教えて欲しい。」
「うん、どしたの?」
「栞ちゃんは好きな人いる?」
その瞬間栞の顔はブワッと赤くなった。
「ええ?ど、どうしてそんな事聞くの?」
「もしかしたら…なんだけど、栞ちゃんは塔矢くんのことが好き?なのかなーって。」
あたりの空気が重くなったように感じた。聞いちゃいけないことを聞いたかもしれない。
「え、ごめん!聞いちゃダメだったやつだったら」
「ううん。間違いじゃないよ?私そんなに分かりやすいかな…?」
違う。困らせたくないがためにそのような言葉を言いたかった。でも栞に嘘をつくのは嫌だった。 
「うん。分かりやすいのかも。でも大丈夫!私以外は多分バレてない。」
「そっか。」
「困らせちゃったらごめんね?」
「困ってないよ?協力して欲しい。よかったら」
「協力…?」
「うん。例えば私が塔矢と近づけるように…見たいな?」
難しいのかもしれない。でも真実を知った以上は協力しようと思った。
「いいよ!わかったじぶんにできる事少ないかもだけど精一杯頑張るから!」
「ありがとぉぉぉぉ!!やっぱり夢亜は最高の友達だよ〜!」
「えへへ//」

こんな風に時が過ぎ去ればよかったんだ。
なにも言わなきゃよかったんだ。
まだ呪いに包まれていない私たちが
これから酷くなることをまだ知らなかった。