「須藤のすごいところはさ、ほんとに誰とでも仲良くしようとすんのよ。壁がなーんもないんだよね」
「壁がない…」
そう言われてまた彼の方を見る。
「いや、絶対俺の方が高いから!ねえ、井上、俺の方が高いでしょ!?」
何をしているのかと思えば、友達と背比べをしているようで…
「…なるほど」
「でしょ?」
自分と友達どっちが高いか、席の近くにいた静かなグループの井上さんに返事を求めている。
須藤くんがからかってるわけではなく、本当に自然に彼女たちに話しかけているのは空気でわかる。
だからこそ、井上さんや周りの子達も突然話しかけられて驚きながらも答えているようだ。
「あいつがいるとクラスが和むし、仲良くなるっていうのはあるね」
たまにムカつくこと言うけどね〜なんて笑う咲季の言葉が耳から抜けていく。
初夏を感じさせるかのような暖かい空気が窓から流れてくる。
なんだか胸がきゅっと締め付けられるような気持ちに、私はまだ、戸惑っていた。
