「千景ー?お前遅すぎ!もう顧問来てんだけ・・・ど・・・・・・?」


ガラガラガラと教室のドアが開く音と同時に澤くんが勢いよく入ってきたのだ。

もしかして今までのやり取りを見られていたのかもしれないと咄嗟に顔を逸らした私と反射的に私を隠したちーくん。
そして顔が青ざめていく澤くん。

ややあってちーくんが澤くんの方へ進み出した。


「悪ぃ一華。もう行くわ」
「う、うん」
「また明日な」
「う、うん」


それからちーくんは澤くんの首をガシッと掴んで教室から出ていった。


「ちょっと来い」
「あれ、もしかして邪魔した?え、マジでごめんて。そんなつもりなくって」


少しだけこんな会話が廊下から聞こえた気がする。

一気に力が抜けた私は、窓に身体を預けた。

まだ顔は火照ったままだ。

夕陽のせいだとか、そんなんじゃない。

さっきの一連の流れが脳を反芻する。

夢の中にいるような出来事だった。

まだ実感が全然ない。

そのまま力が籠らない手で日誌を書き終え、おぼつかない足取りで帰宅した。

本日の反省だとか、冷静に考えることは出来なかった。