「海智!空!つまみ食いすんな!」


「あきが怒ったー!空、にげろー!」


「わー!!あきちゃんおこったぁー!ぎゃはは!!!」





駒井家の夕飯前は大体こんな感じ。


キッチンから美味しそうな匂いがして、
そこにはエプロン姿のあきと、
腹ぺこな親子。


「空、手を洗ってこい。」


「はぁーい!」



あきがご飯をお皿に盛りつけながら空に言った。


それをダイニングテーブルから眺めた。



「……海智。」



「なにー?」



「ジロジロ見られるとやりづらい。なんかよう?」



「んー?
あきはいいお嫁さんになるねーって話。」



「は?」



「いやー、
あきがご飯作ったりしてくれるとバイトに行きやすくてねー。
あ、明日のバイト朝からねー。」



「はいはい。」




対面のカウンターキッチン越しに見えるあきは私の顔を見ずに返事をする。




「あき…」



「なに?」



「ごめんね…。」