日が登り、私はあきの隣を歩きながらバイト先に向かう。
土曜日も空を保育園に預けるんだけど早朝のバイトだと間に合わず、
結局あきにお願いしている。
土曜日ぐらいしかバイトに入れなくて、
未成年だから深夜のバイトはできない。
くやしいな、私何にもできないんだって思い知らされる。
「にしても化粧派手。」
「接客業だから仕方ないじゃん!でも可愛いでしょー?」
ニヤリとそう聞くと、
あきは真っ直ぐに私を見つめた。
「な、なに?」
「…べつに。」
「言いたいことあるなら言ってよね。」
「……化粧で化けすぎ。」
「はい?」
「スッピン部屋着の海智を見慣れすぎて化粧派手。」
「な!」
言わせておけば…
言いたい放題いいやがったな!
「あきのイジワル!」
「スッピン見たら100年の恋も冷められるぞー。」
ニッと笑って私の頭を撫でた。
「恋なんてしてる暇ないよ。
それに空を立派に育てなきゃ。」
頭からあきの手が離れ、
あきは視線を逸らしながら「そうだな…。」と呟いた。
「そんなあきこそ、彼女いないのー?」
「いねーよ。」
「でも好きな人ぐらいいるでしょ?!」
逸らされた視線がまた私の瞳を捉える。
じっと見つめるあきの目。
次は私が目を逸らしてしまった。
「さあね。でも守りたいやつならいるよ。」
「そ、そうなの?」
「空と…海智、お前。」
「私?」
「そ。可愛い甥っ子とドジなお前を守んなきゃな。」
「それは兄として?」
「………。」
数秒の沈黙。
なんで私はそんなことを聞いてしまったんだろう。
血は繋がらなくても兄であることには変わりないのに。
それ以上の、私たちを守る理由なんてないのに…。
