「あとで行く。」
鉄平は私の体を二人に託すと菊姫の部屋から出て行った。

私に背を向けた瞬間、家臣たちにいろいろと指示をする鉄平。
菊姫が亡くなった今、すべきことが山積みなのだろう。

あまりの衝撃に何もできずにいる私と違い、次々にやるべきことをこなしていく姿は、王という地位の器なのだと思い知る。


たとえこの世界よりも医学の進歩していた時代に生きていても、たとえ誰よりもその医学の力を借りて生きて来たとしても、この世界でできることなんて何もなかった。

あの日、菊姫の背中をみて、何か予感していたのに何もできなかった。

隣に居たのに、助けられなかった・・・。