脆姫は過去に生きる

「あなたは生きて。あなたがいる限り私もこの子も、あなたの中で生き続けます。」
「ダメだ。咲菜がいないとだめだ。私は強くあれない。」
「大丈夫。あなたなら大丈夫。」
鉄王は私の方をちらりと見ながらも必死に馬を走らせ続ける。

絶対にあきらめないと必死に。


でも私は気づいてしまった。

前を行くのは人を一人しか乗せていない馬。
ふたり乗馬している時点で馬に負担がかかり、さらに足元まで水が来ている状況を考えると・・・

このままでは助からない。

「あなたに出会えてよかった・・・ありがとう・・・愛してます・・・」
私はそっと手を伸ばし、鉄王の頬に触れた。