脆姫は過去に生きる

「咲菜、この場所は危険だ。移動する。」
鉄王は私の体を抱き上げた。

「すぐに馬を!すべての馬を解放しろ!位は関係ない!馬に乗って高台へ!」
低く響く声で指示をしながら鉄王は家臣が用意した馬に私の体を乗せた。
「少しの辛抱だ。」
今は私の体の状況を優先していられない。

池が決壊したら私たちの命が危ない。

真っ暗な中、ともされた火を持つ兵が民を導く。
近くの高台までは少し距離がある。

池の決壊がはじまっていたとしたら一刻をあらそう。

「・・・・っ・・・」
私は強くなる痛みに耐えながら、鉄王にしがみつく。