「おかえり。今日はまた遅かったな?」
「服買ってきたの」
服を見せると、お父さんが驚いたような顔をした。
「お前…どこでこんな服見つけたんだ?」
「最近リニューアルした、なんとかって所」
「……すっごいかわいい服買ってきたな!似合うと思うぞ!」
だといいんだけど。
「さては…好きだな」
「へ?なにが?」
「一緒に遊びに行く男の子のことが!」
「いやもう全然まったく」
「えっ」
我ながらひどく否定したかもしれない。でも、好きなひとなんて…
うん?


深夜、縁側に座って夜空を見上げてみる。好きなひとと一緒にいろんなところに行けたら、どれだけ幸せなんだろう。どれほど充実するんだろう。きっと、考えられないくらいなんだろうな。恋は盲目って言うくらいだし。
「か…け、る…」
…かける?かけるって、誰だろう。なにか、懐かしい響きのような気もする。会ったことがある。…でも、顔も姿も、思い出せない。何かが足りない。
そうだ、そのひとだけじゃない。私を含めて4人だった。私たちは友達だった。考えられないような経験をした。死ぬんじゃないかと、何度も考えた。助けられて、助けて、助けられた。大事なみんな。
何で思い出せないんだろう。私は、かけるに何を想っていたんだろう。何を約束したんだろう。何かをしようとしていた。ふたりで、何かを成し遂げようと…?いや、違う。遊んでいた。ううん、それでもない。
大事なことなのに。
「…ま、いっか」





























雪と初めて会ったのは、小学4年生の時。父親が再婚して、連れて帰って来たお義母さんの娘が雪だった。当時、雪はとても人見知りでお義母さんと話してる所くらいしか見たことがなかった。でも、平和だった。それでも幸せみたいなものがあった。
だから、限界が来たんだと思う。お義母さんは酒に溺れ、お父さんはギャンブルに走った。家は荒れて、毎日喧嘩をしていた。私たちは、部屋に隠れてることしかできなかった。
それでも、私たちは楽しみを見つけていた。私は絵を描くこと。雪は歌うこと。泣きそうになっても、そのことを考えたら、大丈夫な気がしていた。
でも、お義母さんにそれをしていることが見つかった。とても怒られた。雪はずっと泣いていた。今までにないくらいの涙を流した。
雪が中学生に上がるときに、雪はお義母さんと引っ越すことが決まった。でも、雪は怒られた一件以来、お義母さんのことが怖くてたまらないように見えた。だから、お父さんと一緒に引っ越すことをなんとか押し通した。これでもお姉ちゃんだから、妹のために、最後にしてあげたいと思った。



























「え…?」