放課後に連れてこられたのは、最近リニューアルしたショッピングモール。たしかに前に来た時は、こんなに煌びやかな装飾は多くなかったし、雰囲気も今より重かった。
「優奈ちゃんは雰囲気が落ち着いてるから、カチッとしたものが似合うと思うな」
「これとかどう!?」
自分に合うかどうかなんて、全く分からない。それに、流行りとかも知らないし。
「お客さま、何かお探しですか?」
「この子に合う服探してます!なにかないですかね?」
「そうですね…」
…嫌なニオイがする。


「大丈夫ー?」
「私たちがはしゃいじゃったね…」
分かってはいた。着せ替え人形にされることくらい。でも、ここまで過酷だとは思わなかった。
「これで蓮くんもイチコロだよ」
「うんうん!」
「え?」
「頑張ってくるんだよ」
「応援してる!」
ひょっとして、何か勘違いしている感じかな?
「ま、待って。イチコロって…なに?」
「なにって、蓮くんのこと好きなんでしょ?」
「はい!?」
「アオハルだねぇ〜!」
「ええ??」
別にロンを好きだと思ったことはないし、これからもないと思ってた…でも、こんなふうに言われると意識するかもしれない。いや、しないかな。
「蓮くんのどこが好きなの?」
「えっ、えっ…」
「蓮クンってイケメンイケボだよねえ。優奈ちゃんに嫉妬してる子、多いと思うよ」
初耳だし、そんな面倒そうなことになっていたなんて。女の子がみんな的に回りそうな状況な気がするけど。
「優奈ちゃんはどこに惹かれたワケ?」
「全部はなしだよ?」
「い…いや、そんなのじゃ」
「照れ隠しかよ〜!!」
「いいんだよ、隠さなくても…」
そう言われてもなあ…。嫌いじゃないけど、恋愛対象として好きってわけでもないし。友達としては、まあ、うん。そうだけど。
「そんなのじゃないって。久しぶりに出かけるから、好きな服着たいなって思っただけ」
「ホントかあ?」
「嘘の可能性大だね」
「なんでそうなるのさ…」
まあ、別に好きなひとがいるわけでもないけれど。
「ふ、ふたりはどうなの?好きなひととか」
「うーん…南は、彼氏いるから彼氏かな!」
「私は…まあ」
「名波は絶賛想い中だよねっ!」
これは、チャンス?
「そそそ、それは言わない約束…」
「えっ、だれだれ?」
「同じクラスの」
「か、カンベン…」
「…ま、カンベンするか。私に免じて許そう!」
「恩に着ます…」
誰なんだろう、すごく気になるけど。まあ、おいおい話してもらおうかな。