「美味しそうっ…いただきます!」
メニューの写真よりも美味しそうに見える。このお店は人気なんだ。
「美味しい!このハンバーグ、大豆かなあ?」
「ここはヘルシーなものも多いんだ。サラダの種類も多いし、大豆メニューもあるから、女性客に人気だって」
まるで覚えてきたかのような口調で話してるけど…
「ずいぶん、調べたんだね」
「い、いや!?軽く下調べしただけだって」
ほんとかなあ。
「それよりさ、優奈の飲み物ひとくちくれよ」
「いいよ」
「えっ、いいのかよ!?」
「いいに決まってるじゃん。そんな気にする?」
「な、なに言ってんだ」
最近、ロンが変なんだよなあ。べつに一緒のジュース飲むくらい気にしないのに。友達同士でナワバリ争いみたいなの、したくないし。


「美味しかったー!」
「本当に、よかったのか?俺、優奈のものけっこうもらったけど」
まただ。何をそんなに気にする必要があるんだろう。
「そんな気にすることないって」
「……あー、やばい。キツいな」
「え?体調悪い?」
「違う違う。こっちの問題だよ」
ひょっとして、何かを隠してたりするのかな。

モヤモヤは消えないまま過ごすしかなくなった。






あっという間に夕方になった。楽しい時間は過ぎるのが早いね。
「『エリアノーチラス』は、閉園1時間前となりました。引き続き楽しみたい方は……」
「ここ、閉まるの早いんだね」
「夜の方が儲かるからじゃないか?」
「なるほど」
今は18時。イベントの際には深夜まで開くらしいけど、何もなければかなり早めに閉まるらしい。それをみんな分かっているのか、早めに『エリアヴァルハラ』に行く人も多い。
「…優奈。時間、あるか」
「うん。あるけど」
「……ちょっと、こっち」
連れられた先は、あまり人が居ない場所。日が沈んでるから、奥の方はもう真っ暗になってる。


「……今日、来てくれてありがとな」
「ううん。楽しかった。遊園地って、こんなに楽しいんだね」
「……はは…やっぱりかなわねーや」
「え?」
「…優奈…頼むから、笑わないでくれよ」
「う、うん」
「優奈。俺、優奈のこと好きだ」
「えっ…?」
「去年の文化祭の時から、好きだった。大好きなんだ」
「え…と」
「優奈。俺と付き合ってほしい」
「へっ!?」
「…返事は、今すぐじゃなくていいんだ。いつか、答え、教えてくれないか」
「………」
「な、なあ。ひとつ聞いていいか?」
「う…うん」
「順番おかしいけど……今、好きなやつとか、いる?」
「…い、いない…」
「…そっか」