Chapter3 落日の刻


『あなたの望みが叶う あなたの欲を満たす 遊ぶほど楽しくなる エリアノーチラス』

「相変わらず変なキャッチフレーズだよな」
「私もそう思う。ここ、遊園地だよね?」
「まあ、元はスラム街にあったテーマパークだからかな。仕方ないんだろ」
この遊園地は、少し特殊な場所。遊べる場所が特に多い『エリアノーチラス』と、賭け事が多く行われ、夕方から朝にだけ開いている『エリアヴァルハラ』のふたつ。それらを合わせてノーチラスと呼ぶ。
「ジェットコースター乗りたいんだ。いけるか?」
「う、うん」
一番嫌いなのが最初だよ…まあ、嫌いとは言っても苦手な度合いが少し高いだけなんだけど。


「……思ったより、怖かったな」
「そうかな?楽しめたけど」
「うそだろ?」
なんだか、思ってたより幼稚だったというか。そこまで高くなかったような気もするかな。ロンは怖がってるみたいだけど。
「最初の威勢はどうしたの?」
「は、はは…カッコ悪いな」
「そんなことないよ」
「そうか?なら、女神さまに祈った甲斐があったかな」
褒めるとすぐ調子に乗るんだから。


そういえば、もうお昼時なんだ。どこかでお昼を食べたいけど…遊園地ってどこも高いんだよね。あれ、なんでだろう。
「ここは…」
「入るか?ここ、美味いらしいぜ」
「ほんと?」
「おう。値段に見合う味だってさ」
人気なのは、花をモチーフにしたパフェがついてくる、『ドリームセット』。何種類もの洋食が食べられるらしい。
「洋食メインらしいな。どうする?」
「じゃあ、ここで」
「んじゃあ入るか」
中は異世界をモチーフにしているらしく、独特の雰囲気を醸し出していた。ファンタジーのような世界観かな。
「いらっしゃいませ。夢の世界へご案内いたします。どうぞこちらへ」
「店員さんは剣士なんだね」
「ああ。料理人は魔法使い、支配人は王様らしいぜ。ほかは…」
「ずいぶん詳しいね。調べたんだ」
「まっ、まあな!かるーくだけど」
席やテーブルは木でできていて、それでも心地よく、リラックスできる空間があった。木の温かみってやつかな。
「ご注文はこちらの杖でお願いします」
「杖?」
「この杖を振ると、呼び鈴代わりになるんだ」
すごいなあ。本当に魔法が使えるようになった感覚になれるんだ。
「なに食べる?」
「美味しそうなものいっぱいだし、目移りしちゃうなあ…」
色んなものがつまめるセットや、大盛りのご飯…どれにしよう。
「な、なあ。提案だけど」
「うん?」
「俺と優奈、別のものを頼んで、分け合うってのはどうだ?」
「…うん、いいかも!そうしよう」
じゃあ、ドリームセットがいいのかもしれないなあ。
「私、これにするよ」
「分かった、じゃあ俺はこれにするか」
ロンが杖を振ると、遠くで鈴の音が鳴った。本当に呼び鈴の役割になるんだ。
「お待たせしました。ご注文ですね」
「ああ…」


いつも世間話とか、他愛ない話をしてるから気付かなかったけど、こうして見ると、頼りになるんだなあ…。