――やれやれ。

そう思いながら優太を見て未散は苦笑する。 


「そうやっていつまで意地悪ばっかりするつもり?」 


そろそろほんとの事言ったら?と未散はさりげなく優太の脛を蹴る。 


「早いほうがいいと思うよ?すでに衣に目をつけている男は7人はいたね」


早くしないと誰かに取られちゃうかもよお、と未散は優太にけしかける。 


事実、衣が未散の前に座ってからは、男子達の視線は二人に注がれていた。 

それは紛れもなく彼らが衣を見ようとしていたとしか言いようがない。 


残念ながら、未散は衣を見ようとすると視界に入ってくるだけでそれ以上の意味は無い。 


「それは困る!ダメだよ、そんな、衣が他の男に取られるなんて!!」 


「私がどうかした?」 


――げっ。 


いつの間にか戻ってきていた衣に二人はぎょっ、とする。 


「あ、俺、トイレ行って来るわ」 


動揺しまくりの優太は、机の角に足をぶつけ、「いてっ」とか言いながら教室を逃げるようにして出て行った。 


「…どうしたの?」 


何も知らない衣は、普通に思ったことを未散に聞いた。 
「あ、あぁ…ココでも衣は男の注目の的だって言ってただけ。でも衣は優太以外の男にはいくら言われてもダメだもんね」 


いつか優太は衣に言ってくれるのかな、と未散は、イヒ、と笑う。 


「また未散は変な事言う!優太がそんなこと言うわけないでしょ」 


そう言うと衣は、ぷいっ、と前を向いてしまった。 


――あらら。また怒っちゃった。 


いつものこととはいえ、ちょっとだけ気まずくなる。 


そう。 


このややこしい状況を未散が知ってもう2年半になる。 


衣と優太はお互いがお互いの想い人。 


なのに優太の言動は小学生レベルだし、衣は衣で優太の言動を真に受けているので「優太は私のことなんて嫌いなんだよ」とかってに勘違いしているので実に中途半端なままココまできている。 


――一体この二人、いつになったらくっつくんだろう…。 


また3年間見守らなきゃいけないのだろうかと未散は腕を組みながらため息をついた。