「…おはよ」


未散がそう言うと、優太はニコニコしながら未散の隣の席にどかっ、と荷物を置いた。 


「…優太、なに、その荷物」 


「なにって、決まってるだろ。俺の商売道具。もう今日から練習に行くもんね」 


お前も行くだろ?と優太は未散に聞きながら椅子に座る。 


「入るつもりはあるけど、今日は行かない」 


未散は机に頬杖をつく。 



「なんだよ、やる気ないなあ」 


いいよいいよ俺一人で行くから、と優太は少しむくれる。 


そんなやり取りを二人がしている間、衣は手鏡を見て髪を直していたが、 


「あーもう直んない、優太のばかっ」 


私トイレ行って来る、とブラシを片手にぷりぷりしながら衣は教室を出て行った。 


「優太さあ、もうちょっと愛情表現変えたら?」 


何も怒らせなくても、と未散は優太を見る。 


「何いってんだよ、怒ると可愛いから怒らせるんじゃんか」 


わかってないねえ未散さんは、と優太はイヒヒヒと笑った。