次に目が覚めた時には辺りが暗くなっていた。



「そろそろ帰らないと…」


いくらビジネスホテルだとしても、何日もここにいるわけにはいかない。



暗い夜道を歩いて、人気のない道路に出た。



満天の星空の下で、澄み切った空気を吸いながら空を見上げていた。



家に帰りたくないな。



「こんな所で、何してるの?」



「誰?」



振り返ると、高身長の男性が立っていた。



綺麗なスーツを身にまとい、丁寧にセットされた髪。



「君、お名前は?」



「新手なナンパ?」



「ふふ。そうだって言ったらどうする?」



「別に、どうもしないんだけど?」



「そうか。」



そう言って、その男性は私の隣に腰を降ろした。



「制服着て、警察にでも見つかったら補導されるよ?」



補導されるって…



まだ、夜の9時を回ったところじゃない。



「まだ夜の9時だけど?」



「まだって…


お前なあ…。」



呆れた表情で、その男性は私を見ていた。



何この人…。



何でそこまで、私と関わろうとしているわけ?



「家に帰らなくて、心配されないのか?」



「別にいないから。」



「は?」



「私を心配してくれる人なんて、この世にはいないから。」



私には、親と呼べる人がいなければ家族といえる人だっていない。



自分の家はあるけど、正直帰りたいと思えない。



あの家に残されている、母親が使っていた家具と淀んでいる空気が残っている家に帰りたくない理由。



「ふーん。


それなら安心だな。」




「え?」




「俺について来いよ。


美味しいご飯、食べさせてやっから。


細い体見れば、どうせろくに飯食ってないことが分かるよ。」




正直、どうでも良かった。



ご飯を食べさせてもらえるなら。



明らかに怪しいこの男の後を追い、私はある高級ホテルへ連れられていた。



「乗れよ。」



エレベーターに乗り込むと、最上階へと向かっていた。



この男は一体何者なの?



見た目は、20代後半といったところだろうか。





モデルのように、背丈はスラッとしている。



顔も整っているし、彼女だっているんじゃないの?



こんなことして、大丈夫なわけ?



「じっと見つめてどうしたの?」



「え?」