伊織さんに『家まで送る』って言われたけど、私はそれを断った。
理由は、『行きたい場所』があるから。

だから今日は、伊織さんと夏帆ちゃんとは、待ち合わせしたショッピングモールの噴水前でお別れ。

伊織さんも私に手を振りながら、すごく嬉しい言葉を掛けてくれる。

「七瀬ちゃん、何かあったら、すぐに相談してよね。
こんな俺達だけど、力になれることはあるはずだから」

「はい、ありがとうございます。
ご馳走様でした」

私はそう言って頭を下げると、伊織さんは『笑み』をこぼして、夏帆ちゃんと一緒に歩いて行った。

その姿を見た私も歩き出し、『目的地』に向かう。
その『目的地』は少し遠いけど、散歩が好きな私だから、気にしない。

イヤホンを自分の耳につけて、好きな音楽を聞きながら、すっかり暗くなった街を歩き出す。