それにone sinの制服は、花にとっては少し憧れでもあった。
 チェック柄のシャツ、に黒のマーメードスカートはとても気品があり、首元のシャツと同じ柄のリボンも華やかで大好きだった。子どもの頃に両親とone sinの店に来て、父に「あの人と同じ服が欲しい」とスタッフの制服を買って欲しいと言い笑われた事を今でも覚えている。それぐらいにその制服が素敵だと思っていた。
 それを自分が着る事になるとは昔の自分は考えもしなかっただろう。自分の制服姿を鏡越しに見た時はつい笑みがこぼれてしまった。


 「それでは、お世話役として冷泉さん。お願いします」
 「はい。冷泉翠(れいせんすい)です。乙瀬さん、宜しくお願いします」


 そう言って花の目の前に歩み寄ったのは、ブロンドの髪が綺麗な女性だった。肌もきめ細やかで白く、瞳も日本人とは違う色。異国の人だろうか、と思いつつも名前は日本のものだった。にっこりと微笑みこちらを見るだけで、同性の花でもドキリとしてしまうほどの美人だった。


 「乙瀬さんよりも年上だけど、何でも気軽に聞いてくださいね。今日は、店内の説明と当分の間、乙瀬さんにやっていただく仕事内容をお伝えします」
 「は、はい。よろしくお願いします」
 「それと、………少しいいかしら?」


 朝礼が終わったのを確認した後、花は店内の奥、VIPルームに通された。まだ営業時間ではないので誰もいない。

 パタンッと扉を閉めたのを確認した翠は、くるりと花の方を振り向いた。
 その表情は先程笑みを浮かべていたものとは一変して真剣なものだった。次に何を言われるか、花にも察しがついた。