とっぷりと日が暮れた商店街、ざあざあとよく降る雨の中を駅前のバレエスタジオから家へ向かって私はとぼとぼと歩いている。
 今年は記録的な雨続きなのだとテレビのニュースでやっていた。そういえば、もう何日も青空を見ていない。まるで今の私の気持ちみたい。
 バレエスタジオに私が通いだしたのは、まだ保育園の頃だった。
 商店街にお買い物をしにきた時に見たひらひらのレオタードの女の子たちにあこがれてどうしてもやりたいってお母さんに頼み込んだんだ。初めお母さんは、渋い顔をした。
 家はお母さんも働いているから、送り迎えが大変だって思ったみたい。でもお父さんがお母さんを説得してくれて、なんとかやらせてもらえることができたんだ。
 そしてすぐに私はバレエに夢中になった。
 レッスンはすごくきびしいけど、やればやるだけ上手になるのがわかるから、ちっともつらくはなかった。
 初めは週に二回だけだったのが、毎週その日を待ちきれなくて三回に。四回にしてほしいと言う頃にはお母さんもあきらめたみたいだった。
 好きなだけやりなさいと言ってくれて、小学四年生からは、月曜日から金曜日まで毎日レッスンを受けるようになっていた。
 そしてその頃から、毎年の発表会だけじゃなくてコンクールにも出るようになったんだ。
 コンクールは発表会と違って点数をつけられる厳しい世界。それでもとにかく踊るのが楽しくてたまらなかった。
 初めて入賞できたのは六年生の時。
 地元の小さなコンクールだったけど、今までの練習の成果が出たような気がして本当にうれしかった。いつもは厳しい先生も涙ぐんで喜んでくれた。さぁこれからまだまだやるぞって時に事件は起こったんだ。