さすがにこれには女子だけじゃなくて男子の方からもおー!という声があがった。
 私の頭の中はパニックだった。
 たしかに私たちは昨日、もうこそこそしないってことを約束した。
 でもいくらなんでもこんなところで言うなんて!
「悠馬ったら!いったいどういうつもり?こんな風に言ったらみんなびっくりしちゃうじゃん」
 私は小声で言って悠馬をひじで突いた。
 さっちゃんがあきれたような声をだした。
「でも、るり。みんながびっくりしない方法なんてないよ。もうすでにあんたたちは有名人なんだから」
 そこまで言ってさっちゃんは、じろりと森さんをにらんた。
「いつどうやってバラしたって、無駄に騒ぐ人は騒ぐんだし、こうやって王子の口から言う方がいいんじゃない?」
 森さんはさっちゃんに向かって何かを言いかけたけど、悠馬の方をチラリと見て口を閉じた。
 悠馬が女の子たちの方を向いた。
「とにかくそういうことだから。俺がるりのことずっと好きで、ようやく昨日本当につきあえることになったんだ。るりに変なことを言ったりしたら、絶対に許さないから!」
 …再び、教室が蜂の巣を突いたみたいになって、隣のクラスからも何かあったのかと人が見にくる始末だった。
 私は真っ赤になってしまう。
 確実に明日には、学校中に知れわたってしまうに違いない。
 それでも悠馬は平然として、私の手を引いた。
「帰ろ、るり」
 まったく、困った王子様だ。
 でも不思議と不安にはならなかった。
 前は教室の誰も信じられなかった。何かあったらすぐに敵になるんでしょ?って思ってた。
 でもきっと今はそんなことはない。
 さっちゃんがいて、川口君がいて…それから森さんたちの向こうでは、おめでとう!って拍手をしてくれている子たちもいる。
 …大丈夫。
 さっちゃんが"グッジョブ"って言うみたいに親指を立てて微笑んでいる。私はそれに小さくうなずいてから、悠馬と二人で教室をあとにした。