でも時々、こんなふうにしてからかうようなことを言うときがあるんだけど。
「この間、俺がした質問の答えが出たみたいだね。弟みたいに育った相手でも恋愛対象として見られる…と」
「川口君!」
 さっちゃんがちょっと意外そうに川口君を見た。
「なに川口、そんなことるりに聞いたの。いったい何のために」
 さっちゃんには川口君から告白を受けた話はしていなかった。
 あのときの告白は申し訳ないけど私にとっては、告白後の話の方がインパクト大だった。だからなんとなく、言いそびれてしまっていた。
「ちょっと事情があってね」
 川口君が意味深な笑みを浮かべて、それをさっちゃんがうさんくさそうににらむ。
 その時…。
 教室のドアがガラリと開いて、クラスメイトの女子が声をあげながら入ってきた。
「夏美!夏美!大変!新情報だよ!」
 その言葉の内容に、私の胸がどきりと鳴る。
 なんとなく…。嫌な予感。
 ちらりとさっちゃんを見ると、さっちゃんも私と同じことを考えているみたいだった。
 教室中の注目を浴びながら森さんはそのクラスメイトにかけよる。
「なになに、どうしたの?」
 他の何人かの女子も、興味津々といった様子で集まっている。そしてみんなに聞こえるくらい大きな声で話し始めた。
「悠馬君、なんと新しい彼女ができたんだって!!!」
 やっぱり…。
 私はがっくりと肩を落とす。
 それにしても彼女たちは、どうしてこんなに情報が速いんだろう。
 もはやこれは才能の域だよね。
 森さんが不満の声をあげた。
「なにそれ?他校の彼女は?どういうこと?」
「そう思うよね!だからそれを聞いた女の子もそう言ったんだけど、そしたら悠馬君が、あの話は嘘だったって言い出して…」
「えー!なにそれー!!」
 女の子はそこでいったん水筒のお茶を飲んで呼吸を整えてから、また話し始めた。