いたずらが見つかった時みたいに私の胸がずきんと痛んだ。
 六年の時のことは家では必死で隠していて健二にも言ってなかったけど、さすがに同じ学校に通う彼の目はごまかせなかったんだ。
 悠馬が膝に置いた私の手に自分の手を重ねた。
「嫌なこと思い出させてごめん。でもそれで俺、やっとわかったんだよ。俺の大好きな強くて明るいるりを変えたものの正体が」
 悠馬は重ねた手で私の手をぎゅっとにぎった。その温もりが、一瞬あの頃に戻りかけていた私の心を引き戻した。
 そうだ今はあの頃とはちがう。さっちゃんがいて、悠馬もいる。
「それで…。俺とつきあうようになって、あの友達ともうまくいったみたいだし、また元の明るいるりに戻っていって、よかったって思った矢先に、…クラスの女子にバレたんだ」
 悠馬の声が低くなった。
「…あいつらが、るりを悪く言うのはわかってた。だから、るりがまた嫌な思いをする。しかもそれが自分のせいなんだって思ったら、俺恐くなったんだよ」
「…だから別れようって言ったの?」
 私の言葉に悠馬が無言でうなずいた。
「そのあと、他校に彼女がいるって言いふらしたのも…女の子達の関心を私からそらすため?」
 また悠馬がうなずいた。
 私は少し長いため息をついた。
 つじつまが合わないなんて思っていたのが嘘みたい。
 今ぴったりとすべてのピースがはまっていく。そのパズルの絵柄はきっと二人の明るい未来。
 悠馬が心配そうに私を見ている。私は彼を安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だよ。もう森さんたちは私には関わってこないもん。さっちゃんもいるし、平気平気」
 悠馬が安心したように息をはいた。
「よかった…」
 その表情に私の胸が感謝の気持ちでいっぱいになった。
 知らなかった。
 悠馬がこんなにも私のことを考えてくれていたなんて。
 膝に置かれた手を私はしっかりと握り返す。 そこから、悠馬を想う私の気持ちが流れ込み、私を想う悠馬の気持ちが戻ってくる。
 オデットにかかっていたすべての呪いが、今完全に解けてゆく。
 それをしっかりと感じながら目を上げると、燃えるような悠馬の視線がそこにあった。
「悠馬、ありがとう。大好きだよ」
 思いの全てを伝えた私の唇に、悠馬がそっとキスをした。