「俺、るりが好きなんだ。小さい頃から、記憶にある限りずっと」
 予想以上の悠馬の告白に、私はおどろきすぎて言葉を返せない。
 悠馬も私のことを好きでいてくれているということはまでは予想通りだけど、記憶にある限りずっとって…そんなことありえるの!?
 そんな私の考えはどうやら顔に出ていたらしい。
 悠馬が不満そうに私をにらんだ。
「何回も言ってただろ」
 でもそれって、保育園の頃の話だ。あれを本気にしろっていうのは少々無理があるような…。
「とにかくずっと好きだった。るりはいつも元気いっぱいで、踊ることが大好きで、強くてカッコいい俺のあこがれの女の子だったんだ。それなのに…」
 悠馬が声を落として眉を寄せた。
「中学になって、引っ越してきた時のるりはちょっと変わってしまっていた」
 悠馬の言葉に、思い当たることがあって、私はうつむいた。
 メガネをかけて地味に振る舞い自信をなくしていた頃の自分が頭の中に蘇った。
「俺なんでるりがそうするのか、全然わからなくてさ。しかも直接聞いちゃいけないような気がしたから、教室に行くようになったんだ。るりがクラスでいじめられてるんじゃないかと思って」
 パチンとひとつ、パズルのピースがはまる音が聞こえた。
 だから悠馬は、私の教室に来てたのか。
 悠馬が小さくため息をついた。
「それから…それとは別に、るりに意識してほしくて、適当な理由をつけてつきあうように仕向けたんだ」
「仕向けたって…」
 私は小さく反論する。
「私がいいよって言ったんだから、私の意志でつきあったんだよ」
 それを聞いて悠馬はふっと笑った。
「まぁね。でも俺何年るりの側にいると思う?あぁ言えば必ずるりが乗ってくるってわかってたんだよ」
 私はちょっとむっとする。
 でも悲しいかな、そうなのかもしれないと思い口をつぐんだ。
「とにかくそうやってつきあうことにこぎつけたんだ。でもその頃に…俺…」
 悠馬はそう言って唇をかむ。
 私はゴミ捨て場での悠馬を思い出していた。
 苦しそうな表情は見ててこっちがつらいくらい。でもこれを聞かないと私たちの新しい道は開けない、そんな気がした。
 しばらくはそうやって黙り込んでいた悠馬だけど、無理やりまた口を開いた。
「俺、健二から聞いたんだ。…るりが、六年の頃にバレエが原因でいじめられてたって」