健二の言う通りだ。
いつも私は、なんでなんでって思うばかりで、肝心の自分の気持ちを悠馬に伝えたりはしなかった。
伝えなきゃわからないのが人の気持ち。それを私は、嫌というほど知っているのに。
…もしかしたら、悠馬だって私の気持ちがわからなくて不安になっていたのかもしれないよね。
私は目の前の弟をまじまじと見た。
「な、なんだよ?」
健二はちょっとたじたじして私から少し下がった。
「健二も、意外とちゃんと考えているんだ」
「な、なんだよ、それ」
健二はいい加減なやつだけど、小さい頃から人一倍優しいところがあった。
友達のうちの誰かが悲しい顔をしてたら一番先に気がついて、どうしたの?って声をかけるのはいつも健二だった。
うん。
悠馬が、サッカーで悩んでるときに健二に相談したっていうのも、納得だな。
健二は不満そうに私をにらんでから、ちょっと考えこんだ。そして迷いながら口を開いた。
「悠馬のやつがこれからどうするつもりなのか、俺にはわからないよ。でもあいつ、これからちょっと大変になると思う…」
「大変って?」
私が首を傾げると健二は何かを思い出す時みたいに天井を見上げた。
「秋に…部活の大きい大会があるんじゃなかったかな。悠馬、そのレギュラー候補なんだ」
そういえば川口君もそんなことを言っていた。秋に大きな大会があるって。
それにしたって信じられない、悠馬まだ一年生なのに、いきなりレギュラーだなんて。さすがは将来有望なクラブチームのエース。
「あいつクラブチームに入ってるから、本当は部活には入るつもりはないって言ってたけど、誘われて仕方なく入ったんだ。でもやってみたら部活の方がおもしろいみたいでさ。初めての大会だから気合いが入ってるらしい。このチームで絶対に高いところまでいってやるとか言って」
「そうなんだ…」
そういえばレッスン後のあの時間に悠馬がそんなことを言っていた。
クラブチームのメンバーはどこかライバルなんだけど、部活は違うって。仲間なんだって。
ねぇ、悠馬。
私たちあの時間にたくさん話をしたよね。
サッカーのこと、バレエのこと、友達のこと、それから家族のこと。
さっき健二に自分の気持ちは伝えていなかったって言われて、つきあっている間、肝心なことは何も話してなかったんだって思ったけど、案外そうでもなかったのかも。
私は目を閉じて、大きくゆっくりと息を吸う。
こうやって悠馬のことを思いだすと、体のすみずみ、髪の毛の先にまで、力が満ちていくような気がした。
そうか、悠馬もやるんだ。
私は目を開けて、息をはいた。そしてしっかりと、両足で立ち上がって健二を見た。
「ありがとう健二。やっと、自分がどうするべきかがわかったよ。それから、どうしたいのかも」
健二が私を見上げて、ニヤリと笑った。
「強い姉ちゃんが戻ったな」
私は健二の目を見てうなずく。そして時計を見た。
「私、レッスンに行かなきゃ」
いつも私は、なんでなんでって思うばかりで、肝心の自分の気持ちを悠馬に伝えたりはしなかった。
伝えなきゃわからないのが人の気持ち。それを私は、嫌というほど知っているのに。
…もしかしたら、悠馬だって私の気持ちがわからなくて不安になっていたのかもしれないよね。
私は目の前の弟をまじまじと見た。
「な、なんだよ?」
健二はちょっとたじたじして私から少し下がった。
「健二も、意外とちゃんと考えているんだ」
「な、なんだよ、それ」
健二はいい加減なやつだけど、小さい頃から人一倍優しいところがあった。
友達のうちの誰かが悲しい顔をしてたら一番先に気がついて、どうしたの?って声をかけるのはいつも健二だった。
うん。
悠馬が、サッカーで悩んでるときに健二に相談したっていうのも、納得だな。
健二は不満そうに私をにらんでから、ちょっと考えこんだ。そして迷いながら口を開いた。
「悠馬のやつがこれからどうするつもりなのか、俺にはわからないよ。でもあいつ、これからちょっと大変になると思う…」
「大変って?」
私が首を傾げると健二は何かを思い出す時みたいに天井を見上げた。
「秋に…部活の大きい大会があるんじゃなかったかな。悠馬、そのレギュラー候補なんだ」
そういえば川口君もそんなことを言っていた。秋に大きな大会があるって。
それにしたって信じられない、悠馬まだ一年生なのに、いきなりレギュラーだなんて。さすがは将来有望なクラブチームのエース。
「あいつクラブチームに入ってるから、本当は部活には入るつもりはないって言ってたけど、誘われて仕方なく入ったんだ。でもやってみたら部活の方がおもしろいみたいでさ。初めての大会だから気合いが入ってるらしい。このチームで絶対に高いところまでいってやるとか言って」
「そうなんだ…」
そういえばレッスン後のあの時間に悠馬がそんなことを言っていた。
クラブチームのメンバーはどこかライバルなんだけど、部活は違うって。仲間なんだって。
ねぇ、悠馬。
私たちあの時間にたくさん話をしたよね。
サッカーのこと、バレエのこと、友達のこと、それから家族のこと。
さっき健二に自分の気持ちは伝えていなかったって言われて、つきあっている間、肝心なことは何も話してなかったんだって思ったけど、案外そうでもなかったのかも。
私は目を閉じて、大きくゆっくりと息を吸う。
こうやって悠馬のことを思いだすと、体のすみずみ、髪の毛の先にまで、力が満ちていくような気がした。
そうか、悠馬もやるんだ。
私は目を開けて、息をはいた。そしてしっかりと、両足で立ち上がって健二を見た。
「ありがとう健二。やっと、自分がどうするべきかがわかったよ。それから、どうしたいのかも」
健二が私を見上げて、ニヤリと笑った。
「強い姉ちゃんが戻ったな」
私は健二の目を見てうなずく。そして時計を見た。
「私、レッスンに行かなきゃ」


