え?何が?
 川口君は固まってしまった私をよそに話を続けている。
「神谷さんの方はどうなの?弟みたいにして一緒に育ったやつを恋愛対象として見れるもんなの?…ってあれ?どうしたの?」
 どうしたもこうしたもないよ。
 川口君、いったい何を言ってるの?
 今の彼の話だとまるで悠馬が私のことを好きみたい。
 私はびっくりしたまま、何を言っていいかまったくわからなかった。
 でも何か言わなくちゃと思って口を開く。そして出た言葉は、とてもシンプルなものだった。
「それって…悠馬が私を好きってこと?」
 まさかそんなわけないよねって思いながら言った言葉は、シンプルな言葉で返された。
「そうだよ」
「え!!」
 私は思わず飛び上がってしまう。
 川口君の方はこれまたびっくりして、ちょっとあきれたように私を見た。
「まさか、神谷さん気がついてなかったの?」
「ししし知らないよ!そんなの!」
 私はぶんぶんと首を振る。
 川口君がため息をついた。
「神谷さんって、ちょっと残念な子なんだね」
 む、何よそれ。
 でも彼の話の続きを聞きたくて私は口をつぐんだ。
「好きじゃなきゃあんなにお迎えにこないでしょ。雨の日には傘を持って来たりしてさ。あれはたぶん神谷さんに男が近づかないように牽制してたんだろうな。あいつチームでは優秀なディフェンダーなんだ」
 ディフェンダーの意味もわからないし、ただそれだけで悠馬が私を好きだって決めつける川口君もわからなかった。
「迎えに来てたのは、幼なじみだからだよ。ご近所さんだから帰る方向が一緒だし…」
 川口君が吹き出した。