反対に森さん達に対する怒りがこみあげてきた。
　私が悠馬を好きだとしてなぜそれをあなた達に言わなきゃいけないの？
　悠馬とつきあったことで私の中に芽生えた気持ちは私にとってはすごくすごく大切なものだ。
　苦しかったり、つらかったりもあるけど、全部が全部、悠馬を好きって気持ちからくるかけがえのないものなんだ。
　今だって胸の中でキラキラと宝石みたいに光り輝いて、私に勇気をくれる。
　まだ悠馬に伝えられていないこの気持ちを誰かに先に言うつもりはなかった。
「森さんには関係ないでしょ。どいてくれない？教室に戻りたいの」
　でも当然、森さんたちは、素直にとおしてはくれない。
「言うまで、通さないから！」
　そう言ってますます行く先をふさいでしまう。
「通して！」
　そして無理やり通ろうとする私と押し合いになった。
「このっ！」
「きゃっ！」
　森さんに肩を押された私はバシャンと音を立てて、水たまりへ転んでしまった。
　その時。
「やめろ！！」という男子の声が聞こえて、男女二人の生徒がこっちに走ってくるのが見えた。
「るり、大丈夫！？」
　さっちゃんと、それから悠馬だった。
「さっちゃん…」
　私は心の底からホッとして立ち上がる。でも制服はどろどろだった。
「るりが帰って来ないから心配で…」
　さっちゃんはハンカチで私の頭をふきながら言った。
　それで悠馬と一緒に探してくれたんだ。
「…どういうことか説明してください。先輩」
　悠馬がいつもよりも低い声で森さんに尋ねた。
　怒ってるって一目でわかる悠馬の様子にさすがの森さんもまずいと思ったのが何も言えないで目をそらしている。
　そこへ一年生の女の子がわって入った。
「悠馬が、ちゃんと説明しないからだよ。みんな悠馬の彼女が誰なのか知りたくて仕方がないのに。こそこそ、するから」
「お前は黙ってろ！」
　いつもの悠馬だったら絶対に言わないようなきつい言葉に、女の子はびくっと肩をゆらす。