私は周りを見回すけど、残念ながら誰もいない。森さん達の追求をひとりで切り抜けるしかなさそうだった。
 森さんが、怖い顔のまま口を開いた。
「私達が何を言いにきたのかわかるよね?」
 私はうなずくことも首を横に振ることもできずにただ黙り込むことしかできなかった。
「何か言いなよ」
 後ろにいるクラスメイトの一人が言った。
 それでも私は何も言わなかった。
「私達のこと陰で笑ってたんでしょ」
 森さんが真っ赤な顔で私をにらむ。
 やっぱり…。
 昨日の悠馬の言い訳は完全に忘れ去られているみたいだ。もう彼女達の間では私と悠馬は隠れてつきあってるってことになっているみたい。
 私はため息をついてから口を開いた。
「笑ってなんかいないよ。私と悠馬はそんなんじゃないから」
 そう言って、教室に戻ろうとするけど女の子達がとうせんぼをするように広がって、ダメだった。
「通してよ!」
 私はちょっと強い言い方で彼女たちに言う。だんだんと雨が強くなってきた。このままじゃ、傘をさしていない私はびしょ濡れになっちゃう。
 私の中にいらだちがつのっていく。
 ただ好きな人と一緒にいただけなのに、どうしてこんなことまでされなきゃいけないの?
「ねぇ、本当のことを言いなよ。悠馬君のことが好きなんでしょ?バレバレだよ。それなのに私は関係ないって顔してその態度がムカつくのよ!」
 森さんが顔を真っ赤にして私につめよる。
 いつもの私なら恐いって思ってただろうな。でも今はなぜか全然恐くはなかった。