「悠馬君、なにしてるのー?」
 少しテンションの高い声をあげながら女の子達がこっちに向かって歩いてくる。悠馬が立ち上がって、私を隠すように背中を向けた。
「今日はサッカーないのー?」
「なになに、女の子と一緒じゃん。もしかしてこの人が、噂の他校にいるって彼女?」
「えー!だとしたら私達、スクープゲットじゃん」
 さすがの悠馬もなんて答えたらいいかわからないみたいだった。
 それでもなるべく女の子達から私が見えないように立ってくれている。顔がバレる前に逃げられたらいいけど、さすがに今逃げたらあやしまれるよね。
 今私にできることは、うつむいてなるべく顔が見えないようにすることくらいだった。
「サッカー部は休みだよ。俺がべつに何してたっていいだろ。もう行くから」
 そう言って悠馬が私の手を引く、そしてテラスの出口に向かって歩き出そうとしたその時、「あ!」と女の子の一人が声をあげて私の顔をのぞきこんだ。
「他校の人じゃないよ!うちの学校の先輩じゃん」
 その子の言葉に、後の二人も私の方を見た。
「森先輩と同じクラスの、ほら!悠馬君が時々迎えにいくって言ってた。幼なじみの先輩だよ」
 私と悠馬は凍りついたように動けなくなってしまう。
 絶体絶命とはこういうことをいうんだ。
 私たちの様子から女の子達は確信したみたいだった。
「やっぱり!森先輩が言ってたんだぁ。最近メガネをやめてイメチェンしたんだって、だから絶対にあやしいって。先輩の言ってたことが大当たりってわけだよね。すぐに報告しなきゃ」
 私の背中をつーと冷たい汗がつたう。
 悠馬が、ため息をついて女の子達に向き直った。
「べつにお前たちが思ってるようなんじゃねぇよ。幼なじみだって言ってただろ。健二と三人で来てたんだよ」
 でも女の子達は納得できないみたいだった。
「健二なんてどこにもいないじゃん」
「先に帰ったんだよ」
「でも健二が先に帰ったのに、二人でテラスにいるなんてあやしくない?絶対にあやしいよ」
「お前らなぁ…」