オデットの初恋~学校の王子様とニセモノの初恋はじめました~

 べつに悠馬が嫌ってわけじゃない。弟みたいだけど話しは面白いし、帰る方向だって一緒なんだから。
 でも学校では悠馬はとにかく目立つ存在でファンの女の子だって多いから、ああやってこられたら、私まで目立っちゃう。
 それでなくても私は地味に中学生活を送りたいある事情があるのに…。
 そう、わけあって私は学校では地味に目立たなくしていたいと思ってる。一年生の時は、悠馬がいなかったからそうしていられたんだけど今年の春、奴が入学してから思いもよらなかったお迎え攻撃が始まって、私の今までの努力が無駄になってしまってるんだ。
 学年でも私のことなんか知らないって子がほとんどだったはずなのに、今やちょっとした有名人、つまり『王子の幼なじみ』ってことで。
「傘なんかなくてもいいもん」
 部活がある日は悠馬も迎えには来られない。今日は部活がある日だから安心してたのに、たぶんサッカー部の活動が雨で中止になってしまったんだろう。がっかりして私はついついきつい言い方になってしまう。
「びしょ濡れになったら風邪をひくだろ」
 お母さんみたいなことを言って悠馬が私に傘を差し出す。それを見て私は少しだけ、申し訳ないなという気持ちになった。
 でも私はその傘を受け取らずに首を横に振った。
「ありがたいんだけど、さっきさっちゃんと帰る約束をしたんだ。だから一緒には帰れない。ごめんね、悠馬」
「それはべつにいいよ。俺、健二と帰るし。傘を渡しにきただけだから。ほら、風邪ひいたら困るんだろ。早くしないとレッスン遅れるよ」
 私が差し出された傘を受け取ると、悠馬は納得したように微笑んだ。
 その笑顔を見て、やっぱり言いすぎちゃったかな、と私は反省する。だって悠馬が学校で目立つのは悠馬のせいじゃないもんね。
 小学校が別だったから私は知らなかったけど、どうやら悠馬は小学校の頃からかっこいいので人気があったらしい。おまけに地元のプロサッカーチームのジュニアチームにも所属しているから、サッカー部からもすぐにスカウトされたりして…。
 そんな有名人が、今まで地味で知られていなかった私を誘いにくるんだから、そりゃみんなびっくりするよね。