日曜日は晴天だった。
「このまま梅雨が明ければいいのにね」
 悠馬が大げさにうんざりしてみせる。
「俺、練習不足で禁断症状が出そうだよ」
 私はくすくすと笑った。
 午前九時のクリスタルロードを二人で歩いている。
 私はお気に入りのサンダルを鳴らしながら悠馬の隣をウキウキとして歩いた。
 Tシャツにシャツを重ね着して、ボディバックをななめにかけた今日の悠馬は、すっごくカッコいい。
 ラフな格好でもやっぱり王子様は王子様だって思う。
 あまりじっと見るのは恥ずかしいけど、よく目に焼き付けておかなくちゃ。今日は悠馬が私だけの王子様でいてくれる最後の日なんだから。
「せっかく晴れたんだから、練習したかったんじゃない?だとしたらごめんね」
 悠馬は「いいよ」と言って首を横に振った。そして私を見て、少し考えてから口を開いた。
「るりって、ワンピースが好きだよな。この前もワンピースだった」
 今日の服は、キャンディ柄のワンピース。これも夏に向けて買ってもらったばかりのお気に入りだ。
「うん、楽だから。上と下別々だと、色が合ってるかとか柄がバラバラだとか、いろいろ考えなきゃいけないでしょ?その上バッグに靴に…とか考えてたら頭がこんがらがっちゃうの」
 悠馬がはははと声をあげた。
「なに?悠馬」
 私が首を傾げると、悠馬がにやにやしながら口を開いた。
「るり、小さい頃から全然おしゃれには興味がなかったじゃん。洋服は大抵おばさんが適当に買ってくるやつをこれまた適当に着てるって健二が言ってた。さすがに中学になってから一緒に買い物に行くようになったけど、途中で飽きちゃって、ベンチで待ってるっておばさんがなげいてるって」
「な!なによそれ!」
 私声をあげて、悠馬のボディバッグをひっぱる。健二の奴、なにをバラしてくれてるの!
「ははは!もうずっとバレエに夢中だもんな。他のことはどうでもいいんだろ」
「どうでもいいわけじゃないけど…」
 私は頬をふくらまして悠馬をにらむ。たしかに優先順位は低いけど、これでも最近は気にするようになってきた方なんだ。
 そう…悠馬と会うようになってからは。
「もう、今日もちゃんと選んできたのに…」
「わかってるよ、よくにあってる。るりは明るい柄が似合うよな。それにポニーテールも」
 突然の悠馬の言葉に私の胸が飛び跳ねた。
 悠馬、今なんて言った?
「最近は学校でもポニーテールにしてるだろ?メガネもやめたみたいだし…」
 私は顔が熱くなってもう彼と目を合わせることもできなかった。
 悠馬にかわいいって思ってほしくて選んだ服なんだから、似合ってるって言われてうれしいはずなのに、胸がドキドキしすぎて何も言えない。
 ニセモノの好き、じゃなくて、本当の自分の気持ちでデートをしたくて悠馬を映画に誘ったんだけど、あまりにドキドキしすぎて、なんだか心配になってきちゃった。