「でも…スランプから抜け出すきっかけをくれたと思う。悠馬に相談しなかったらきっと私、まだスランプのままだった」
悠馬が、ゆっくりと首をかしげた。
「きっかけ?」
「うん、そう。私にオデット姫の気持ちをおしえてくれるって言ったじゃない。私今までバレエをしてて、なんの役をやるのかは理解してるつもりだったけど、演じてはいなかった。その役の気持ちになって踊ったことはなかったの。でも今回はオデット姫の気持ちになって踊れるような気がするよ」
私は夢中になって今の素直な気持ちを一生懸命悠馬に伝える。
一方で悠馬の方は少しびっくりしたように私を見てから「よかったじゃん」と言って視線をそらした。
その顔が、少し赤い。
あれ?なんかちょっと照れてる?
そう思ってから、私もあることに気がついて頬が熱くなった。
そうだ、オデットの気持ちがわかるなんて言ったら、恋する気持ちを理解したってことになるじゃん。つまりは私が悠馬にドキドキしたってことで…。
私は熱った頬のまま悠馬のとなりへストンと座った。
失敗しちゃった。言わなくてもいいことまで言ったかな。でも擬似初恋体験ができたって意味に聞こえるだろうから、大丈夫だよね…?
私は恐る恐る悠馬を見る。
悠馬は、膝に頬杖をついて玄関のドアを見つめていたけど、しばらくして、軽く咳払いをしてから口を開いた。
「パドドゥってなに?」
「え?あ、パドドゥはね」
私は少し話題がそれたことにホッとする。そして話し始めた。
「パドドゥは、男女がペアになって踊るプログラムなの。うちのスタジオには男の子が一人しかいないから、パドドゥができる女の子は限られていて…いつもは美香ちゃんって子がやるんだけど、受験で忙しいんだって。それで私に…。まぁ、補欠が繰り上がったみたいなもんだけど」
なんだか照れくさくてちょっと早口になってしまう。
悠馬が私の方を見て瞬きをした。
「でもそれはるりのがんばりが認められたってことだろ」
「え?」
「サッカーでもレギュラーに何かあった時は控えの選手が出るんだけど、選ばれるのはちゃんと準備してるやつなんだ。るりはどんなにつらいときでも基礎練習をしに毎日スタジオに行ってたじゃないか。それが認められたんだ」
悠馬の言葉に、私は思わず涙ぐんでしまう。
どうして悠馬には私の言ってほしい言葉がわかるんだろう。
でも考えてみれば、初めからそうだったのかもしれない。
バレエの悩み俺に言ってみたら?って言われた時、なんで悠馬に?って思いながらも、実は心のどこかで誰かからそんな風に言われたいって思っていたんだ。
私の話を聞いてほしいって。
悠馬だけが、それに気がついてくれていた。
『るりのバレエへの思いを打ち明けられる人ができたのなら、その人を大切にするのよ』
悠馬が、ゆっくりと首をかしげた。
「きっかけ?」
「うん、そう。私にオデット姫の気持ちをおしえてくれるって言ったじゃない。私今までバレエをしてて、なんの役をやるのかは理解してるつもりだったけど、演じてはいなかった。その役の気持ちになって踊ったことはなかったの。でも今回はオデット姫の気持ちになって踊れるような気がするよ」
私は夢中になって今の素直な気持ちを一生懸命悠馬に伝える。
一方で悠馬の方は少しびっくりしたように私を見てから「よかったじゃん」と言って視線をそらした。
その顔が、少し赤い。
あれ?なんかちょっと照れてる?
そう思ってから、私もあることに気がついて頬が熱くなった。
そうだ、オデットの気持ちがわかるなんて言ったら、恋する気持ちを理解したってことになるじゃん。つまりは私が悠馬にドキドキしたってことで…。
私は熱った頬のまま悠馬のとなりへストンと座った。
失敗しちゃった。言わなくてもいいことまで言ったかな。でも擬似初恋体験ができたって意味に聞こえるだろうから、大丈夫だよね…?
私は恐る恐る悠馬を見る。
悠馬は、膝に頬杖をついて玄関のドアを見つめていたけど、しばらくして、軽く咳払いをしてから口を開いた。
「パドドゥってなに?」
「え?あ、パドドゥはね」
私は少し話題がそれたことにホッとする。そして話し始めた。
「パドドゥは、男女がペアになって踊るプログラムなの。うちのスタジオには男の子が一人しかいないから、パドドゥができる女の子は限られていて…いつもは美香ちゃんって子がやるんだけど、受験で忙しいんだって。それで私に…。まぁ、補欠が繰り上がったみたいなもんだけど」
なんだか照れくさくてちょっと早口になってしまう。
悠馬が私の方を見て瞬きをした。
「でもそれはるりのがんばりが認められたってことだろ」
「え?」
「サッカーでもレギュラーに何かあった時は控えの選手が出るんだけど、選ばれるのはちゃんと準備してるやつなんだ。るりはどんなにつらいときでも基礎練習をしに毎日スタジオに行ってたじゃないか。それが認められたんだ」
悠馬の言葉に、私は思わず涙ぐんでしまう。
どうして悠馬には私の言ってほしい言葉がわかるんだろう。
でも考えてみれば、初めからそうだったのかもしれない。
バレエの悩み俺に言ってみたら?って言われた時、なんで悠馬に?って思いながらも、実は心のどこかで誰かからそんな風に言われたいって思っていたんだ。
私の話を聞いてほしいって。
悠馬だけが、それに気がついてくれていた。
『るりのバレエへの思いを打ち明けられる人ができたのなら、その人を大切にするのよ』


