私は思わず声をあげた。
「そんなこと絶対にダメ。森さん悠馬のことが好きなんでしょ?どうしてそっとしてあげられないの?好きな人の幸せを願ってあげられないの?」
 森さんはますます怖い顔で私を見た。周りの女の子達もヒソヒソとささやきあいながら、眉をひそめて私を見ている。
 少し前の私なら考えられなかった。こんな風に森さんに歯向かうなんて。
 でもどうしても、好きなら悠馬本人に迷惑をかけてもいいのだという彼女達のやり方が許せなかった。
 森さんがふんと鼻を鳴らした。
「馬鹿みたい、正義の味方ぶっちゃって。自分は王子になんて興味がないみたいな顔して本当は一番気になってるんじゃないの。王子が迎えに来なくなってからだよね。神谷さんが、メガネをやめたり髪型を変えたのって。もしかして、王子が来てくれなくなったから、おしゃれして気を引こうとしてる?」
「もう、いい加減にしなよ!自分が相手にしてもらえないからってるりに絡むのはやめな!」
 さっちゃんが割って入った。
 気がつけば、私達の言い合いは教室のみんなの大注目を集めてしまっている。
 森さんもそれに気がついた。
「協力してくれないならもういいわ。私達は私達のやり方でいくから、行こうみんな」
 そう言って、女の子達を引き連れて、さっさと教室を出て行く。
 私はその場に立ち尽くしたまま、しばらく動けなかった。
 結局、私が何を言っても無駄なんだろう。でも私だって悠馬のために何かをしたいと思ったんだ。
 友だちともうまくいかず、バレエもスランプ、どん底にいた私に手を差し伸べてくれた悠馬に。
 隣でさっちゃんが、わたしの肩をぽんぽんと叩いた。