デートの日を境に私の生活は大きく変わった。
 一年の時の球技大会の出来事は、実は後から失敗だったかなって思った記憶がある。あの時はあまりにもひどいと思ったから口出ししたんだけど、言い出しっぺの女の子にすごい目で睨まれたから。隣のクラスの子でよかったーって。
 でもその私を見て、さっちゃんは友達なろうって思ってくれたんだ。
 地味に誰にも目をつけられないようにしてた一年生の頃はいじめられたりはしなかったけど、特別仲のいい友達はできなかった。それなのに私らしい行動をとった事がきっかけで本当の友達ができたんだ。
 そのことが私の中の何かを変えた。
 まず、学校でメガネをするのはやめにした。
 髪型も、家にいるときみたいにポニーテールをしていくことにした。
 つまり地味に目立たないようにってそればかりを考えるのはやめたってこと。
 さっちゃんとはますます仲がよくなった。
 バレエのことを隠す必要がないから、放課後は時々一緒にクリスタルロードへ行ってレッスンが始まるまでの時間をおしゃべりをしたり、ショッピングをしたりして過ごすようになった。
 学校へ行くのが楽しいなんて、何年ぶりだろう。さっちゃんと一緒に選んだお気に入りのシュシュをポニーテールにつけて通う毎日は、夢のように楽しかった。
 バレエの方もますますいい方向へ向かっていた。先生からは、いい具合に力が抜けてきたわねって言われたし、少しずつ踊るようにもなっていた。
 オデットのバリエーションは、今までやっていたプログラムより少し難しい動きがたくさん入る。でもそこがやりがいがあっておもしろい。
 こんな風に思えるようになったのは確実に私が前に進んでいるからなんだ。少し前の私なら、絶対にめげてしまっていただろうから。
 それに比べて悠馬との関係は、今までとあまり変わらなかった。
 あいかわらず、レッスン後の少しの時間だけが悠馬と話す時間だった。
 それを私は少し物足りなく感じていた。
 悠馬と話す時間は、さっちゃんとのおしゃべりとは、違った意味で楽しい時間だった。悠馬と話すと毎日の何気ない出来事がキラキラして思える。
 そのうちに、弟じゃない悠馬の顔、私の知らない悠馬の顔をもっともっと知りたいって、思うようになっていた。
 これが悠馬が言っていた擬似初恋体験なんだなぁって思う。
 悠馬との時間が楽しみで、レッスンが終わったら走るみたいにして会いに行く。そしてその時間が終わりに近づくと風船がしぼんたみたいな気分になる。
 忙しく変わる気持ち。
 ドキドキ、そわそわ。
 それでもそれを、嫌だとはちっとも思わない。
 オデット姫もきっとこんな気持ちで王子様との時間を過ごしていたんだと思う。
 …でも本当はここまでわかったんだから、もうやめなきゃいけないって思っている。
 オデット姫の気持ちも理解して、バレエも順調。初めの目的は達成できたんだから。