「怒って…?なんで?」
「だって私、理由も言わないでさっちゃんの毎日の誘いを断って…それなのに悠馬とは来てたんだよ!?」
さっちゃんは今度ははははと笑った。
「るりが私に隠しごとをしてることは私も知ってたじゃない。毎日言ってたでしょ?秘密を暴いてやるって。私の方こそ、誰にだって話したくないことくらいあるはずなのに、嫌がられたりしてないかなって心配してたくらいなんだよ」
「さっちゃん…」
 私はまたもや涙ぐんでしまう。
 さっちゃんがそんな私を見てちょっと真剣な顔つきになった。
「ねえ、るり。るりは覚えてないだろうけど私たち、一年生の時に出会ってるんだよ」
「え?そうなの?」
「うん。球技大会の時、るりバレーボールだったでしょ。ふたクラス合同チームで同じチームだったんだよ」
 そういえばそんなことがあったような…。
 私は記憶をたぐりよせる。
 でもまだ入学して間もない頃だったから同じクラスのメンバーならともかく隣のクラスのメンバーの名前までは覚えられないままに球技大会が終わったんだった。
「私、あの頃ちょっとクラスの強い子に目をつけられててさ。ほら、私って相手が誰でも言い返してしまうじゃない?…それでその子も同じチームにいてさ、負けたあとの反省会で私のサーブミスが多かったから負けたんだって言い出したの。それでその子が怖くて他の子たちもそうだって言って…」
 強い子が言い出したことに逆らわないっていうのは女子の間じゃよくあることだ。
「そしたらるりがさ、チームなんだから負けたのはチーム全体のせいでしょ、誰かだけを責めるのはやめようよって言ってくれたの」
 うっすらと思い出してきた。
 サーブミスなんてみんなしてたのに、一人だけが責められるなんておかしいと思ったんだ。
「私…すごく大人しそうにしてるのに、そんなふうに言ってくれるなんてこの子すごいって思ったんだよ。それで今年同じクラスになった時に真っ先に話しかけたんだ」
 私は大きく息をはいた。