とたんにきゃーという女子の黄色い歓声があがる。私はがくりと肩を落とした。
「出た、王子様」
 さっちゃんがつぶやく。そして意味深な目で私を見た。
「お迎えがきたよ、お姫様」
 私は真っ赤になって頬をふくらませた。
「だから、悠馬はただの弟!!」
「わかった、わかった。でも、弟がこうしょっちゅう姉を迎えに来るかねぇ?」
 にやにやとするさっちゃんに痛いところをつかれて私はうっとつまって彼女をにらんだ。
 そう、悠馬は本当の弟ではない。正確にいうと、弟の友達なのだ。そして保育園からの幼なじみでもある。だからたしかに血の繋がった弟ではないけど、私にとっては家族とそう変わらない存在なのだ。
 それなのに、王子様だなんて…。
 でも彼をそう呼ぶのは実はさっちゃんだけではない。一年生の女子は…いや二年の女子の間でもそう呼ぶ子がいるくらいだ。
 どうやら、そのくらいカッコいいということらしい。
 正直言って私からしたら、悠馬なんて王子様どころかお子様だ。小さい頃は、健二と一緒になって家の庭ですっぽんぽんで水遊びをしていたんだから。
 そしてどういうわけか保育園にいた時から悠馬は私にくっついて、まわっていた。
「るりちゃん、大好き」なんて言って。小さい頃は私もそれがうれしかった。悠馬は小さくて、本当にかわいい男の子だったから。
 学区が違うから小学校は別だったんだけど、弟と悠馬はずっと仲が良くて、あいかわらずしょっちゅう家に遊びにきていた。家でも悠馬はニコニコとして私にまとわりついてきた。私だって家でそうされる分にはなんとも思わないんだけど…。
 でも学校となると話は別だと思う。