「ありがとう!」
 それからフードコートへ移動した。
 苺のシェイクを飲みながら私は不思議な気分になっていた。
 目の前にはうれしそうにサッカーの話をする悠馬。
 その笑顔は小さい頃から見慣れているはずなのに、まったく同じってわけでもないみたい。
 知らない人みたいだったり、いつもの悠馬だったり、ころころ変わる彼の顔になんだか頭がついていかない。でも確実なのは、今のこの時を確実に私が楽しんでいるということ。
 正直言って悠馬とのデートが、こんなに楽しいとは思わなかった。
 取り止めのない私の話も悠馬は聞いてくれるし、悠馬の話もおもしろかった。
 そうだ。
 悠馬は弟なんかじゃないんだ。
 小さい頃から一緒にいて、両方の親にも「姉弟みたいね」なんて言われてたから、すっかりそうだと思い込んでいたけど、違うんだ。
 そんなことが突然頭に浮かんで私はじっと悠馬を見た。
 少し天然のウェーブがかかった髪に綺麗な目、男らしい眉…。
 みんなが王子様なんて呼ぶのも納得だ。
 私は悠馬に気づかれないように、ワンピースの胸の辺りをギュッとつかんだ。
 オデット姫も王子様に出会った時、こんな気持ちだったのかもしれない…そんなことが頭に浮かんだ。