何かあれば私が我慢をして弟たちに合わせるのが普通だった。それなのに今日はなんだか立場が逆だ。
 チケットを握ったまま、立ち止まってしまった私を先に行きかけた悠馬が不思議そうに振り返る。
「どうかした?」
 私は思ったままを口にする。
「なんか、変な気分」
「何が?」
「だって、いつもは私が悠馬とか健二のわがままを聞いてたのに」
 悠馬がびっくりしたように私を見て、またはははと笑った。
「何年前の話だよ。俺もう中学生だよ?それにデートでは女の子に男が合わせるもんなんだ」
 そうなのか…。
 でもそれならなおさら、落ち着かない。
 悠馬は私を女の子として扱うってこと?お姉ちゃんなのに?
 私が恋する気分になるために必要なことのかもしれないけど、それにしてもこの落ち着かない気持ち、なんとかならないかな。
 ドキドキしするようなそわそわするような…。
「ほら行くよ!」
 悠馬が私の手を引いた。
 大きな手…、また私の胸がどきんと鳴った。