だから、夏に向けて買ってもらったばかりのワンピースにしたんだけど…。あらためてじろじろ見られるとなんか恥ずかしい。心の中で何回も「相手は悠馬」と繰り返すけど、あまり効果はなかった。
 一方で悠馬はというと、満足そうにうなずいて「うん、合格」と言った。
「じゃあ、行こう」
 私はホッと息をはいて、悠馬のあとに続いた。
 クリスタルロードにはショッピングセンターの他に映画館もある。今日は映画を見ようということになっていた。
「どれにする?」
 たくさん並ぶ看板を眺めながら、悠馬が私に問いかける。私は、看板を見上げながらうーんとうなった。
 今の時間から観るのにちょうどいいのは、推理アニメの劇場版と、少女マンガが原作の青春ラブストーリー。
 この推理アニメの劇場版は毎年新作が公開されるシリーズもので、私は過去のもの全部を制覇している。
 本音を言えばこっちがいいな。
 でも今日はデートだし。オデット姫の恋心を知らなきゃいけない今の私に必要なのはラブストーリーかも。
 でもアニメの方も気になるし…。
 そんなことを考えながら悠馬の方をチラリと見ると、試すように見ている彼と目が合う。
 やっぱり。
 これはただの遊びじゃなくて恋愛のお勉強なんだから、ちゃんとした方を選ばなくちゃ。
 そう思って私が口を開きかけたとき、悠馬がぷっと吹き出した。
「ははは、るり思ってること全部顔に出てるよ!」
「え!うそ!」
「ほんと、あいかわずわかりやすいんだから。大丈夫だよ、デートは楽しまなきゃ意味がないんだから、るりが見たい方で。劇場版がいいんだろ」
 う…、本当に顔に出てたんだ。
 なんにも言ってないのに、なんだか悔しい。
「ゆ、悠馬が観たいなら、ラブストーリーでもいいよ」
 ちょっと強がって言ってみるけど、悠馬はそのまま笑いながらチケットの列に並んだ。そしてアニメのチケットを買った。
 なんだか調子がくるってしまう。
 こうやって、悠馬と一緒に遊ぶのは随分と久しぶりだけど、公園だってどこでだって私はいつもお姉ちゃんで、親からも弟と悠馬をよろしくねって言われて、頼りにされていたはずなのに。